第29話 答えは分かる。でも、証明は書けない
中学2年生。
9月23日。
『数学 完全攻略2年』
図形の性質と証明。
定期テスト対策。
19問中18問正解。
続いて、合同な図形。
ステージ1。
7問中6問正解。
ステージ2。
6問中5問正解。
合計32問中29問。
正答率90.6%。
かなりできています。
ところが、次の単元へ進むと、急に正答率が下がりました。
■ 証明になると、12問中5問
証明の問題。
ステージ1。
6問中3問正解。
ステージ2。
6問中2問正解。
合計12問中5問。
正答率41.7%。
同じ図形の問題です。
しかし、正答率は大きく違います。
なぜでしょうか。
私は、ここに数学の勉強で大切なことがあると思っています。
■ 知っていることと、使えること
三角形の合同条件。
中学2年生で習います。
三組の辺がそれぞれ等しい。
二組の辺とその間の角がそれぞれ等しい。
一組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい。
これを覚えることは、それほど難しくないかもしれません。
でも、実際の証明問題では、覚えた合同条件を使わなければなりません。
どの三角形に注目するのか。
どの辺が等しいのか。
どの角が等しいのか。
そして、なぜ等しいと言えるのか。
それを、自分で考える必要があります。
■ 解説を読めば、分かる
証明問題を間違える。
解説を読む。
すると、
「ああ、そういうことか」
と理解できることがあります。
でも、そこで勉強を終えてはいけません。
解説を読んで理解できることと、自分で証明を書けることは違います。
これは、数学に限った話ではありません。
英語でも、解説を読めば英文の意味が分かる。
でも、自分で英文を読もうとすると分からない。
国語でも、解答を読めば納得できる。
でも、自分では、その答えを書けない。
同じことが起こります。
■ 証明は、読むだけでは身につかない
私は、証明の勉強では、実際に答案を書くことが大切だと思っています。
解説を読む。
理解する。
そして、解説を閉じる。
もう一度、最初から書く。
どの三角形について証明するのか。
仮定から何が分かるのか。
合同条件は何か。
結論へ、どうつなげるのか。
一つずつ、自分の言葉で書いていきます。
途中で止まったら、もう一度解説を見る。
そして、また閉じて書く。
この繰り返しです。
■ 「分かった?」と聞いても分からない
子どもが勉強しているとき、
「分かった?」
と聞くことがあります。
子どもは、
「分かった」
と答えるかもしれません。
でも、その言葉だけでは、どこまで理解しているのか分かりません。
説明を聞いて納得しただけなのか。
自分で問題を解けるのか。
そこには、大きな違いがあります。
私は、できるだけ実際に問題を解いた結果を見るようにしています。
■ もう一度、何も見ずに解けるか
保護者が勉強を見るときも、同じです。
難しい数学を教える必要はありません。
証明問題を解いたあと、
「もう一度、何も見ずに書ける?」
と聞いてみる。
それだけでも、勉強の質は変わります。
もちろん、すぐに書けないこともあります。
そのときは、もう一度解説を確認すればいい。
大切なのは、解説を読んだところで終わらせないことです。
■ 計算も、同じです
計算は、数学の土台です。
私は、計算練習は本来、毎日続けたほうがよいと思っています。
計算が遅い。
符号を間違える。
分数の処理に時間がかかる。
こうした状態では、難しい問題を考える時間がなくなります。
だから、計算は繰り返す必要があります。
ただし、計算も、解き方を見て分かっただけでは不十分です。
自分で正確に、できれば速く解けるようになること。
そこまで練習する必要があります。
証明も同じです。
合同条件を知っているだけではなく、自分で答案を書けるようになることが必要です。
■ 勉強した時間ではなく、何ができるようになったか
2時間勉強した。
問題集を10ページ進めた。
解説を全部読んだ。
それ自体は、勉強の記録です。
でも、私は、そのあとに何ができるようになったのかを知りたいと思っています。
昨日は書けなかった証明。
今日は、何も見ずに書ける。
昨日は時間がかかった計算。
今日は、正確に速く解ける。
こういう変化です。
■ できるようになるまでには、時間がかかる
一度説明を読んで理解した。
それでも、翌日には忘れているかもしれません。
一度書けた証明も、別の図形になると書けないかもしれません。
だから、繰り返します。
同じ問題を解く。
少し違う問題を解く。
時間を置いて、もう一度解く。
そうして、少しずつ使える知識に変えていきます。
■ 12問中5問から、何をするか
今回の生徒。
合同な図形。
32問中29問。
証明。
12問中5問。
この記録から分かるのは、証明問題では、まだ正解できないものが多いということです。
ただし、何が原因なのかは、答案を見なければ分かりません。
合同条件を選べなかったのか。
等しい辺や角を見つけられなかったのか。
証明の文章を組み立てられなかったのか。
そこを確認します。
そして、必要な練習をします。
■ 子どもの「分かった」を、どう確かめるか
子どもが、
「もう分かった」
と言ったとき。
私は、その言葉を否定する必要はないと思っています。
でも、そこで勉強を終えるのではなく、もう一度解いてみる。
何も見ずにできたら、一つ前進です。
できなければ、まだ練習が必要だと分かります。
それだけのことです。
間違えたから叱る。
できないから責める。
そうではありません。
今、どこまでできるのかを確かめる。
そして、できるようになるまで練習する。
■ 「分かった」の次にあるもの
数学の証明。
12問中5問。
まだ、十分には解けていません。
でも、ここから練習できます。
解説を読む。
理解する。
閉じる。
書く。
また間違える。
もう一度書く。
私は、この繰り返しが大切だと思っています。
保護者の方にも、子どもの勉強を見るときに、一つ意識してほしいことがあります。
「分かった?」ではなく、「何も見ずに、もう一度できる?」
勉強の目的は、説明を聞いて納得することではありません。
自分の力で、できるようになることです。
(『ちりぬるを』第29話 了)

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