【ちりぬるを】――勉強する子は、どうやってつくられるのか【第30話】

第30話 難しい問題を解く前に、簡単な問題を速く解けるようにする

中学2年生。

9月24日。

『数学 完全攻略3年』

三平方の定理。

ステージ1。

6問中5問正解。

ステージ2。

10問中9問正解。

ステージ3。

12問中8問正解。

合計28問中22問。

正答率78.6%。

悪くない結果です。

しかし、私は、正答率だけで数学の力を判断しません。

もう一つ、気になることがあります。

問題を解く速さです。

■ できる問題でも、時間がかかる

この生徒は、学校の定期テストでは数学45点を取っています。

中学3年生の数学も、かなり先まで進んでいます。

でも、初めて見る図形問題になると、時間がかかります。

公式を知っている。

解き方も、ある程度分かっている。

それでも、計算に時間がかかる。

図形の条件を整理するのに時間がかかる。

その結果、難しい問題を考える時間が少なくなります。

■ 翌日、また間違える

9月25日。

三平方の定理。

定期テスト対策。

17問中13問正解。

続いて、平面図形。

ステージ1。

6問中6問正解。

ステージ2。

7問中4問正解。

基本的な問題は、かなり解けています。

ところが、少し難しくなると正答率が下がります。

この結果から、基本問題をさらに速く正確に解けるようにする必要があるのではないかと考えました。

■ 高校入試には、制限時間がある

数学の問題を解くとき、時間を気にしなければ、じっくり考えられます。

10分。

20分。

難しい問題なら、それ以上考えることもできます。

でも、高校入試には制限時間があります。

簡単な問題に時間を使いすぎると、難しい問題を考える時間がなくなります。

だから、私は、計算を速く正確にできることが大切だと思っています。

■ 計算は、毎日やるべきだと思う

計算は、数学の土台です。

小学校の計算。

分数。

小数。

正負の数。

文字式。

方程式。

こうした計算が正確にできなければ、難しい問題を解くときに困ります。

私は、計算練習は本来、毎日続けたほうがよいと思っています。

計算は、理解したら終わりではありません。

繰り返して、速く正確にできるようにする必要があります。

■ 速さは、才能ではない

計算が速い生徒を見ると、頭の回転が速いと思うかもしれません。

もちろん、個人差はあります。

でも、計算の速さには、練習量も関係します。

九九を覚えたときのことを考えてみてください。

最初は、一つずつ考えて答えていたはずです。

でも、何度も繰り返すうちに、すぐ答えられるようになります。

数学の計算も、同じです。

繰り返し練習することで、考えなくてもできる部分が増えていきます。

■ 難しい問題を解く時間をつくる

例えば、50分の数学の試験。

基本問題に30分かかる生徒。

15分で終わる生徒。

同じ問題を正解できたとしても、残された時間は違います。

前者は20分。

後者は35分。

難しい問題を考える時間に、15分の差が生まれます。

だから、簡単な問題を速く解けるようにすることには意味があります。

■ 10月2日、60分間の挑戦

この生徒には、全国の高校入試問題を解かせました。

図形問題。

制限時間60分。

13問に取り組み、7問正解。

証明問題は、4問中3問正解でした。

解けなかった問題もあります。

ただし、ここで一つ気をつけなければならないことがあります。

この生徒は、分からない問題を飛ばしています。

つまり、未回答の問題がすべて時間切れだったわけではありません。

時間が足りなかった問題と、解き方が分からなかった問題は、区別する必要があります。

■ 解けない問題を飛ばす判断

高校入試では、すべての問題を順番に解く必要はありません。

難しい問題で止まってしまうより、解ける問題を先に解く。

これは、一つの方法です。

ただし、飛ばした問題をそのままにしてはいけません。

試験が終わったあと、なぜ解けなかったのかを確認する。

時間が足りなかったのか。

知識が足りなかったのか。

解法が思いつかなかったのか。

原因によって、次にやる勉強は変わります。

■ 保護者が見てほしいこと

子どもが数学の問題集を解いている。

正解が多い。

それは、よいことです。

でも、できれば、どれくらい時間がかかったのかも見てほしいと思っています。

10問正解するのに30分かかった。

同じ10問を15分で解けるようになった。

これは、正答率には表れない変化です。

ただし、速さだけを求めて、間違いが増えては意味がありません。

まず正確に解く。

そして、少しずつ速くする。

この順番が大切です。

■ 速く解くことと、急いで解くことは違う

私は、生徒に慌てて問題を解いてほしいわけではありません。

急いで計算して、符号を間違える。

問題文を読み飛ばす。

途中式を省略して、計算ミスをする。

それでは、意味がありません。

目指したいのは、慌てなくても速く解ける状態です。

何度も練習した計算は、自然に手が動く。

基本的な図形の性質は、すぐに思い出せる。

そうなれば、難しい問題を考える余裕が生まれます。

■ 中学2年生の今だからできること

この生徒は、すでに中学3年生の数学を進めています。

学校より、かなり先です。

だから、今は高校数学へ進むことを急いでいません。

全国の高校入試問題を使って、初見の問題を解く練習をしています。

その中で、計算の速さや、図形の条件を整理する力も確認していきます。

先取りをしているからこそ、こういう時間をつくれます。

■ 難問を解く力は、基本の上にある

難しい問題を解けるようになりたい。

そう思うと、難しい問題集を買いたくなります。

でも、難問を解く力は、基本的な知識や計算力の上に成り立っています。

計算に時間がかかる。

公式を思い出すのに時間がかかる。

基本的な図形の性質を忘れている。

その状態では、難しい問題を考える余裕がありません。

だから、基本を繰り返すことには意味があります。

■ 次に見たいのは、時間の変化

9月24日。

三平方の定理。

28問中22問。

9月25日。

平面図形。

ステージ1は6問中6問。

ステージ2は7問中4問。

10月2日。

全国高校入試問題。

60分間。

13問に取り組み、7問正解。

これからは、正答率だけでなく、解答にかかった時間も見ていきたいと思っています。

同じ難易度の問題を、以前より速く正確に解けるようになるのか。

その結果、難しい問題を考える時間が増えるのか。

まだ、分かりません。

でも、確かめる価値はあります。

難しい問題を解くために、簡単な問題を速く正確に解けるようにする。

数学の勉強では、この順番も大切だと思っています。

(『ちりぬるを』第30話 了)

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