「高校の実力」はどこで決まるのか――第一・第二・マリストを追う【第18話】指定校推薦は、なぜ生徒に見えないのか

高校入学時に知らせるべき、もう一つの進路

先日、ワカスクに通うマリスト高校3年生が、有名私立大学の指定校推薦について、校内選考を通過しました。

大学への正式な合格は、これからです。

本人がこれまで積み重ねてきた勉強が、一つの進路につながったことをうれしく思っています。

しかし、今回の件を通して、私は以前から抱いていた疑問を改めて考えることになりました。

なぜ、高校は指定校推薦について、もっと早い段階で生徒や保護者に説明しないのでしょうか。

もちろん、すべての高校が説明していないわけではありません。

入学時から詳しく説明している学校もあるでしょう。

しかし、指定校推薦について十分に知らないまま、高校生活を送っている生徒がいるとしたら、それは大きな問題だと思います。

今回は、第二高校、第一高校、マリスト高校を比較するうえでも見逃せない、大学への進学制度について考えます。

1. 指定校推薦は、高校3年生になってから始まる制度ではない

指定校推薦とは、大学が特定の高校に推薦枠を設け、その高校から推薦された生徒が出願できる制度です。

大学によって、評定や履修科目、資格などの条件が定められています。

また、高校側にも校内選考の基準があります。

ここで重要なのは、推薦を受けるための準備が高校3年生からでは間に合わない場合があることです。

評定は、高校1年生からの成績が関係します。

欠席状況や学校生活も、選考で考慮されることがあります。

つまり、高校3年生になって指定校推薦の存在を知ったとしても、高校1年生の成績を取り戻すことはできません。

高校3年生で選考される制度なのに、その準備は高校1年生から始まっている。

私は、ここが重要だと思っています。

2. なぜ指定校推薦の大学名を公表しないのか

高校によっては、指定校推薦の大学名や人数を一般には公表していません。

これには、いくつかの理由が考えられます。

まず、推薦枠は毎年同じとは限りません。

今年あった大学の推薦枠が、来年もあるとは限らないのです。

大学が学部や人数を変更することもあります。

また、指定校推薦は大学と高校の信頼関係によって成り立っています。

大学から高校に個別に条件が通知される場合もあります。

そのため、高校が翌年度の推薦枠を入学希望者に約束することはできません。

この事情は理解できます。

しかし、ここで二つのことを分けて考える必要があります。

一つは、推薦枠の大学名や人数を公表すること。

もう一つは、指定校推薦という制度と、その準備方法を説明することです。

大学名を公表できないことと、制度そのものを説明しないことは、まったく別の問題です。

3. 高校入学直後に、なぜ条件を説明しないのか

私は、高校1年生の入学直後に、少なくとも指定校推薦の基本的な仕組みを説明すべきだと考えています。

例えば、次のような内容です。

  • 指定校推薦という進学方法があること
  • 高校1年生からの評定が重要になること
  • 大学ごとに必要な評定や資格が異なること
  • 校内選考では、どのような項目が評価されるのか
  • 推薦枠は毎年変わる可能性があること
  • 推薦が決まった場合、原則として進学する意思が必要になること

これらを入学時に説明することは、それほど難しいことなのでしょうか。

もちろん、3年後にどの大学から推薦枠が届くかは分かりません。

しかし、過去の推薦枠を参考資料として示し、将来の枠を保証するものではないと説明する方法もあります。

大学名を示すことが難しくても、評定の重要性や校内選考の仕組みは説明できるはずです。

高校1年生のときに制度を知っていれば、定期テストへの取り組み方が変わる生徒もいるでしょう。

進路について考える時期も早くなるかもしれません。

私は、早い段階で情報を伝えることには、大きな意味があると思います。

4. 知っている生徒と、知らない生徒

ここで、一つ考えてみたいことがあります。

同じ高校に入学した2人の生徒がいたとします。

一人は、保護者や兄姉から指定校推薦のことを教えてもらっている。

もう一人は、そのような制度があることを知らない。

前者は、高校1年生から評定を意識して定期テストに取り組むかもしれません。

後者は、高校3年生になって初めて指定校推薦の存在を知るかもしれません。

もし、このようなことが起きているなら、問題ではないでしょうか。

同じ学校に通い、同じ授業を受けていても、持っている進路情報が違う。

その情報の差が、3年後の進路選択に影響する可能性があります。

私は、進路情報を家庭の知識や経験だけに任せるべきではないと思っています。

大学進学の選択肢は、すべての生徒に公平に知らされるべきです。

これは、指定校推薦を積極的に利用すべきだという意味ではありません。

一般選抜を目指す生徒もいれば、総合型選抜を目指す生徒もいます。

重要なのは、それぞれの制度を知ったうえで、生徒が自分の進路を考えられることです。

5. 指定校推薦を知らない生徒は、本当にいるのか

私が気になっているのは、ここです。

高校3年生になっても、指定校推薦の存在を十分に知らない生徒はいるのでしょうか。

制度の名前だけは知っていても、自分の高校にどのような推薦枠があるのか知らない生徒は、どの程度いるのでしょうか。

また、推薦を受けるための条件を知らないまま、高校1年生や2年生を過ごしている生徒は、どの程度いるのでしょうか。

残念ながら、私にはその人数を示せる資料がありません。

したがって、多くの生徒が知らないと断定することはできません。

しかし、進路指導について考えるうえで、確認する価値のある問題だと思います。

例えば、高校2年生に次の質問をしてみたらどうでしょうか。

「指定校推薦とは、どのような制度ですか」

「自分の高校に指定校推薦の枠があることを知っていますか」

「推薦を受けるために必要な条件を知っていますか」

「校内選考の基準を確認したことがありますか」

この質問に、どれだけの生徒が答えられるでしょうか。

私は、その結果に興味があります。

6. 第二高校、第一高校、マリスト高校ではどうなのか

この連載では、第二高校、第一高校、マリスト高校の教育力について考えてきました。

これまでは、主に定期テスト、全国模試、大学合格実績を取り上げてきました。

しかし、大学進学を考えるなら、指定校推薦も無視できません。

特に私立大学への進学では、指定校推薦が重要な選択肢になる場合があります。

ただし、三校について、指定校推薦の説明時期や校内選考基準を比較できる資料は、現時点では十分にそろっていません。

そのため、どの学校の説明が充実しているかを判断することはできません。

今後、確認したいのは、次の点です。

第一に、入学時に指定校推薦について説明しているか。

第二に、過去の推薦枠を生徒や保護者が確認できるか。

第三に、校内選考の基準が事前に示されているか。

第四に、一般選抜と指定校推薦の両方を、生徒が比較して進路を決められるようになっているか。

私は、こうした点も学校の教育力を考える材料になると思っています。

7. 指定校推薦は、学力を伸ばす制度にもできる

指定校推薦については、一般選抜より学力が低い生徒が利用する制度だという見方もあります。

しかし、私は、そのように単純には考えていません。

高校1年生から定期テストに真剣に取り組み、数学や英語を積み重ね、必要な資格も取得する。

その努力が、大学進学につながる。

そういう使い方もできるはずです。

今回、ワカスクの生徒が校内選考を通過したことは、一つの例です。

本人は、推薦が決まったからといって、勉強を終えるわけではありません。

これからも数学、物理、英語を学び、大学入学後に必要になる内容にも取り組んでもらう予定です。

私は、指定校推薦の問題は、推薦で大学に入ること自体ではないと思っています。

推薦を目標にすることで高校3年間の学習が充実するのか。それとも、推薦が決まった時点で勉強をやめてしまうのか。

そこに大きな違いがあると思います。

8. 学校が持っている進路情報は、誰のためのものなのか

指定校推薦の枠は、大学が高校に与えるものです。

しかし、その枠を利用して大学へ進学するのは、生徒です。

だからこそ、私は進路情報の扱いについて、もっと議論があってよいと思っています。

推薦枠が毎年変わることは理解できます。

大学と高校の信頼関係が大切なことも理解できます。

校内選考を公平に行う必要があることも分かります。

それでも、生徒が準備を始めるための情報は、できるだけ早く伝えるべきではないでしょうか。

高校3年生になって初めて詳しい説明を受けても、高校1年生の成績は変えられません。

進路指導は、高校3年生になってから始めるものではないはずです。

高校入学直後から、大学進学までの道筋を示す。

一般選抜だけでなく、学校推薦型選抜や総合型選抜についても説明する。

そのうえで、生徒自身に選んでもらう。

私は、そのような進路指導が望ましいと思います。

学校の実力は、何人を有名大学に合格させたかだけでは決まりません。

生徒が自分の進路を選ぶために、必要な情報をどれだけ早く、公平に伝えているか。

それも、学校の教育力を考えるうえで大切な視点ではないでしょうか。

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