【ちりぬるを】――勉強する子は、どうやってつくられるのか【第20話】

第20話 中学2年生が、中学3年英語を終えた日

9月13日。

中学2年生。

3時間勉強。

この日、

『英語 完全攻略3年』の最後まで進みました。

仮定法。

ステージ1。

20問中15問。

ステージ2。

20問中19問。

定期テスト対策問題。

14問中7問。

次。

接続詞。

19問中17問。

9問中3問。

次。

名詞・代名詞。

22問中13問。

12問中6問。

形容詞・副詞。

15問中11問。

12問中7問。

前置詞。

17問中11問。

13問中6問。

そして、

中学3年英語、終了。

中学2年生の9月です。

■ でも、半分しかできていない

「中2で中3英語終了」

この一文だけなら、

とてもきれいです。

先取り学習の実績としても、

使いやすい。

でも、

私は、

その下にある数字のほうが気になります。

9問中3問。

12問中6問。

13問中6問。

14問中7問。

かなり間違えています。

つまり、

中3英語を終えた。

でも、

中3英語が完成したわけではありません。

第18話で書いたことが、

中学生でも起きています。

■ それでも、止めなかった

接続詞。

ステージ2。

9問中3問。

ここで止めて、

もう一度説明する。

全部できるまで、

同じ単元を繰り返す。

そういう方法もあります。

でも、

今回は進ませました。

名詞・代名詞へ。

形容詞・副詞へ。

前置詞へ。

そして、

最後まで行った。

なぜか。

この段階で私が見たかったのは、

100点ではなかったからです。

中学英語全体を、一度見せること。

まず、

そこまで行かせたかった。

■ 中学英語は、中3まで待たなければならないのか

学校では、

中学英語を3年間かけて習います。

中1。

中2。

中3。

これは、

学校という集団を動かすためには、

必要な時間割です。

でも、

一人の生徒が学ぶときまで、

必ずその時間割に合わせる必要があるのでしょうか。

この子を見ていると、

疑問が出てきます。

もちろん、

全部理解したわけではありません。

英作文もある。

リスニングもある。

長文もある。

単語も必要です。

文法問題集を最後までやったから、

「中学英語完成」

とは言えません。

でも、

少なくとも、

中3で習う文法事項まで、中2の段階で一度触れることはできた。

これは事実として残ります。

■ 先取りの目的は、「早く終わらせること」ではない

では、

なぜ早く進めるのか。

中2で中3を終わらせて、

自慢するためではありません。

私が欲しいのは、

時間です。

一度最後まで行けば、

戻れます。

二周目ができる。

長文ができる。

英単語に時間を使える。

高校英語にも入れる。

英検対策もできる。

そして、

学校の定期テスト前には、

学校の範囲へ戻ることもできる。

早く進む最大の利点は、

早く終わることではなく、

戻る時間を作れること

なのかもしれません。

■ 一周目で100%を求めたら

仮に、

一つの単元を、

100%になるまで進ませなかったら。

9問中3問。

もう一回。

5問。

もう一回。

7問。

また復習。

それを、

すべての単元でやる。

もちろん、

定着は高くなるかもしれません。

でも、

別の問題が出てきます。

進まない。

中学英語全体が、

いつまでたっても見えない。

そして、

人間は忘れます。

最初の単元を100%にしても、

最後の単元へ着くころには、

最初を忘れているかもしれない。

ならば、

一周目から完璧を求める意味は、

どこまであるのでしょう。

■ 忘れることを、最初から予定に入れる

ワカスクの英語では、

忘れないことを前提にしていません。

むしろ、

忘れることを予定に入れています。

英単語もそうです。

進む。

忘れる。

戻る。

また進む。

英文法も、

同じように考えています。

一度やったから、

もう大丈夫。

ではない。

一度やったから、

次に忘れたとき、二回目ができる。

初めて見る文法と、

一度見たことのある文法では、

同じ「分からない」でも違います。

■ 中2の9月に、仮定法を見た

例えば、

仮定法。

この日、

20問中15問。

20問中19問。

かなり取れました。

でも、

定期テスト対策問題になると、

14問中7問。

半分です。

これも面白い。

基本問題ではできる。

形式が変わると落ちる。

第19話で、

世界史の10/10が、

ランダムにすると3/5になった話を書きました。

英語でも、

似たことが起きています。

知っていることと、使えることは違う。

だから、

先取りしただけでは足りません。

■ それでも、一度見たことは消えない

今後、

学校で仮定法を習うのは、

まだ先です。

そのとき、

この子にとって、

仮定法は初対面ではありません。

「ああ、これか」

となる。

接続詞も。

代名詞も。

前置詞も。

初めて理解するときと、

二度目に理解するときでは、

負担が違います。

私は、

先取りの価値は、

ここにもあると思っています。

未来の授業を、復習に変える。

学校の授業で初めて習うのではなく、

学校の授業が二回目、三回目になる。

そうすれば、

学校そのものが、

復習装置になります。

■ ただし、危険もある

ここで、

一つ注意しなければなりません。

速く進めることが、

目的になってしまうことです。

中2で中3終了。

次は高校英語。

どんどん進む。

数字としては、

派手です。

でも、

中身が残っていなければ、

意味がありません。

だから、

今回の記録では、

「中3終了」だけを書かない。

9問中3問。

12問中6問。

13問中6問。

14問中7問。

そういう数字も、

全部残します。

これが、

あとで必要になります。

■ これから、本当に面白くなる

中学3年英語を、

中学2年の9月に一度終えた。

実験として面白いのは、

ここからです。

半年後。

一年後。

どのくらい残っているのか。

中3になったとき、

英検ではどうなるのか。

高校英語へ入ったとき、

中学文法の穴が、

どこで出てくるのか。

学校の定期テストでは、

どうなるのか。

もし、

先へ進んだことで、

基礎が崩れるなら、

方法を変えなければなりません。

逆に、

戻ることを繰り返しながら、

高校英語まで進めるなら、

別の可能性が見えてきます。

■ 学年という時間割を疑ってみる

学校には、

学年があります。

中1。

中2。

中3。

それぞれの学年に合わせて、

学習内容が置かれています。

でも、

学習する側まで、

必ず同じ速度で進む必要があるとは限りません。

速い子は、

速く進む。

止まるところでは、

止まる。

忘れたら、

戻る。

定期テスト前には、

学校へ戻る。

また、

先へ行く。

そういう学び方があってもいい。

9月13日。

中学2年生。

『完全攻略3年』終了。

でも、

私は、

「中3英語ができるようになった」

とは書きません。

まだ、

分からないからです。

書けるのは、

一つだけ。

中学2年生でも、中3までの英語を一度最後まで見ることはできた。

では、

このあと、

何が起こるのか。

そこからが、

実験です。

「早く終わった」が、

一年後、二年後、

「早く始めてよかった」

になるのか。

それを確かめるには、

まだ時間が必要です。

(『ちりぬるを』第20話 了)

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