【ちりぬるを】――勉強する子は、どうやってつくられるのか【第27話】

 第二高校でも、物理は一番やさしい参考書から始める

10月22日。

高校2年生。

第二高校。

この日、物理の勉強をしました。

教材は、

『宇宙一わかりやすい高校物理 力学』

力のモーメント。

2問中2問。

運動量と力積。

3問中3問。

合計5問中5問。

勉強時間は、2時間30分でした。

この生徒は、電気通信大学を目指しています。

学校推薦を利用する可能性もあります。

その場合でも、数学と理科の学力は必要です。

だから、物理の勉強を始めました。

ただし、選んだ教材は、難しい問題集ではありません。

■ 第二高校だから、難しい教材なのか

第二高校。

だからといって、最初から難しい問題集を解かせる必要があるのでしょうか。

私は、そうは思いません。

学校の名前と、本人が今解ける問題は別です。

第二高校に在籍していることと、物理を自分で理解して進められることも別です。

大切なのは、今の本人に合っているかどうかです。

■ 私は、物理を教えていない

ワカスクでは、基本的に物理の授業をしていません。

私が黒板に公式を書いて、解き方を説明するわけではありません。

生徒が参考書を読みます。

図を見ます。

説明を読みます。

例題を解きます。

分からなければ、もう一度読みます。

私は、その様子と結果を見ています。

どこまで進んだのか。

何問解けたのか。

どのくらい時間がかかったのか。

そして、次に何をやるかを判断します。

だからこそ、教材選びが重要になります。

■ 難しい参考書を渡せば、勉強になるわけではない

物理には、いろいろな参考書があります。

公式の説明が中心のもの。

基本問題を繰り返すもの。

大学入試の標準問題を扱うもの。

難関大学向けの問題集。

同じ力学でも、説明の仕方や問題の難しさは違います。

最初から難しい問題集を渡して、解けなかったら私が教える。

それも一つの指導方法でしょう。

でも、ワカスクでは、できるだけ本人が参考書を読んで進められるようにしたい。

そのためには、最初の一冊を慎重に選ぶ必要があります。

■ 「宇宙一」を選んだ理由

『宇宙一わかりやすい高校物理』は、図や説明が多い参考書です。

物理を初めて本格的に学ぶ生徒でも、現象をイメージしながら読み進められるように作られています。

もちろん、この一冊だけで難関大学の入試問題まで解けるとは考えていません。

でも、最初から入試問題を解く必要もありません。

まず、何が起こっているのかを理解する。

次に、式を使えるようにする。

そのあと、問題の難易度を上げる。

今回は、その最初の段階です。

■ 5問中5問では、まだ分からない

10月22日。

5問中5問正解。

数字だけなら、100%です。

でも、私は、この結果だけで物理ができるようになったとは判断しません。

参考書を読みながら解いた問題なのか。

説明を読んだ直後だったのか。

翌週、同じ内容を覚えているのか。

別の問題でも解けるのか。

そこまで確認しなければ、本当の理解度は分かりません。

今回の5問は、あくまで出発点です。

■ 2時間30分で5問

もう一つ、気になる数字があります。

勉強時間です。

2時間30分。

150分。

その間に記録された正解は5問。

これを、少ないと見ることもできます。

ただし、参考書を読んで理解する時間も含まれています。

問題を解くことだけが勉強ではありません。

物理の場合、図を見て、現象を理解する時間も必要です。

それでも、今後は、どれくらいの時間でどこまで進めるのかを見ていきます。

理解に時間がかかっているのか。

問題を解くのに時間がかかっているのか。

記録を重ねなければ、判断できません。

■ 学校の授業と、塾の勉強を分ける

学校では、学校の進度で授業が進みます。

定期テストもあります。

課題も出ます。

しかし、大学受験のための勉強を、すべて学校の進度に合わせる必要はありません。

学校で習った単元でも、理解が不十分なら戻る。

学校でまだ習っていなくても、自分で読んで理解できるなら先へ進む。

大切なのは、学校の授業を追いかけることではなく、本人が物理を理解していくことです。

■ 数学と物理は、同じ進め方ではない

この生徒は、数学では『黄チャート』を使っています。

一方、物理では『宇宙一わかりやすい高校物理』から始めました。

同じ理系科目でも、教材の難易度はそろえていません。

数学で黄チャートを使っているから、物理も同程度の問題集にする。

そういう決め方はしません。

数学には数学の理解度があります。

物理には物理の理解度があります。

それぞれ別に判断します。

■ 第二高校の生徒でも、基礎から始めていい

私は、ここが大切だと思っています。

進学校にいる。

難関大学を目指している。

だから、簡単な参考書を使ってはいけない。

そんなことはありません。

難しい教材を使っていることと、難しい問題を解けることは違います。

むしろ、難しい問題を解けるようになるために、最初はやさしい教材を使うことがあります。

参考書の難易度は、本人の評価ではありません。

今、必要な勉強を選ぶためのものです。

■ 次は、初見の問題で確かめる

今回の5問は、全部正解でした。

では、次にどうするか。

まず、同じ教材で力学を進めます。

そして、ある程度進んだところで、別の問題を解かせます。

説明を読んだ直後ではなく、時間を置いて解けるか。

公式を覚えているだけではなく、使う場面を判断できるか。

そこを確認します。

できるようになれば、問題集の難易度を上げます。

できなければ、戻ります。

最初から、何月までに何冊終わらせると決めつけるつもりはありません。

■ 私が決めるのは、教材と順番

物理の説明をすることは、ほとんどありません。

その代わり、どの教材から始めるかを考えます。

どこまで進めるか。

いつ問題集を変えるか。

どこで戻るか。

その判断は、私の仕事です。

生徒は、自分で読み、自分で解く。

私は、結果を見て、次を考える。

このやり方が、どこまで通用するのか。

まだ、確かめている途中です。

■ 5問中5問から始まる

10月22日。

第二高校。

高校2年生。

物理。

5問中5問。

まだ、たった5問です。

大学入試の問題を解けるようになったわけではありません。

でも、自分で参考書を読み、問題を解くことから始まりました。

ここから、力学をどこまで理解できるのか。

どの段階で、難しい問題集へ移れるのか。

そして、大学入試の初見問題に対応できるようになるのか。

これから、記録を追っていきます。

難しい大学を目指すから、難しい参考書を使うのではない。

難しい問題を解けるようになるために、今必要な参考書を使う。

今回は、一番やさしいところから始めました。

(『ちりぬるを』第27話 了)

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