「高校の実力」はどこで決まるのか――第一・第二・マリストを追う【第7話】15位から150位、そして50位

なぜ一度落ちた生徒が戻ってきたのか

前回、第二高校2年生3人を比較しました。

高校入試では、

A 194点

B 174点

C 170点

でした。

ところが、高校に入ると順位は大きく入れ替わりました。

今回は、その中でもBだけを追います。

Bの進研模試の校内順位は、

15位 → 95位 → 150位 → 50位

です。

一見すると、成績が上がったり下がったりしている生徒です。

しかし、実際に何を勉強していたのかを重ねると、この順位の動きにはかなり理由があります。

高校入学前に、英語を先に終わらせた

Bが来たのは、中学3年の3月ごろでした。

高校入学前です。

そこで最初に進めたのは、高校英語でした。

高校の授業進度とは関係なく、大学受験から逆算して先に進めました。

英単語。

英文法。

英文解釈。

長文。

高校1年の夏までに、大学受験で使う英語をかなり先まで進めました。

私の感覚では、この時点で英語はMARCHレベルの問題にも取り組めるところまで来ていました。

そして最初の進研模試。

高1・7月。

全国偏差値65.5

校内15位。

高校入試は174点です。

第二高校に入った時点で、学年トップクラスだった生徒ではありません。

それでも、入学から数か月で15位に入りました。

ところが、数学ができなかった

英語とは逆に、問題になったのが数学でした。

高校数学の教科書を読んでも、よく分からない。

学校の定期テストでは、

5点

を取ったこともあります。

ここで考えなければならなかったのは、

「高校数学をもっとやらせるか」

ではありませんでした。

なぜ高校数学が分からないのか。

その原因を探す必要がありました。

そして夏休み。

高校数学をいったん止めて、

中学1年の数学からやり直しました。

高校生が、中1数学に戻る

中1。

中2。

中3。

夏休みを使って、自分で解き直しました。

これは一見、遠回りです。

高校生なのに、中学校の数学をやる。

その時間があれば、学校で進んでいる数学Ⅰや数学Aをやった方がよさそうにも見えます。

しかし、数学は前の単元が抜けたまま先へ行くと、後で何度も止まります。

だから、分からないところだけを応急処置するのではなく、一度下まで戻しました。

そして中学数学を終えてから、再び高校数学へ進みました。

数学に時間を使うと、今度は英語が落ちた

ここからBの学習は数学中心になります。

高1・7月に15位だった進研模試は、

11月 95位

そして、

1月 150位

まで下がりました。

高1・1月は、

126点/300点

全国偏差値56.5

校内150位/約400人

です。

ただし、ここで注意が必要です。

150位になったからといって、全国でも低いわけではありません。

このときの全国平均は99.7点。

第二高校平均は119.4点。

Bは126点です。

つまり、順位は15位から150位まで落ちましたが、全国偏差値はまだ56.5ありました。

第二高校の中で順位が落ちることと、全国で学力が低くなることは同じではありません。

前回まで書いてきた「第二高校の層の厚さ」が、ここにも表れています。

そして、高2の夏

数学を進める一方で、しばらく英語から離れていました。

そこで高2・7月の進研模試前に、英語を戻しました。

英単語。

英文法。

以前やっていた内容をもう一度確認しました。

すると7月進研模試では、

155点/300点

全国偏差値62.4

校内50位/399人

まで戻りました。

150位から50位。

100人上がりました。

では、英語を復習したから100人上がったのか

ここは断定できません。

模試ごとに問題は違います。

周囲の生徒の成績も動きます。

数学の学習が積み上がってきた影響もあります。

高1からの成長もあります。

したがって、

「模試前に英語を復習したから100人抜いた」

と因果関係を決めることはできません。

ただし、学習内容と成績の動きが対応していることは興味深い。

英語を先行していた時期には15位。

数学へ大きく時間を移すと順位が下がった。

そして英語を戻した時期に50位まで回復した。

少なくとも、

何に時間を使うかによって、高校生の成績はかなり動く

という一例にはなります。

学校の進度とは、ほとんど関係なく進めている

Bの勉強で特徴的なのはここです。

基本的に、

学校が今どこをやっているかを基準にしていません。

英語が必要なら英語を先に進める。

数学が分からなければ中1まで戻る。

数学が追いつけば、さらに先へ進む。

模試前に英語が必要なら英語を戻す。

基準にしているのは、

「学校の授業に合わせること」ではなく、「大学受験までに何が必要なのか」

です。

そのため、学校の定期テストの点数と全国模試の結果が一致しないことがあります。

数学24点

前にも書きましたが、最近の第二高校の数学定期テスト。

学校平均は、

24点。

Bも、

24点。

学校平均と同じでした。

これだけを見ると、Bの数学は第二高校の平均程度です。

ところが、国数英の全国偏差値は62.4。

校内50位です。

だから私は、定期テスト24点だけを見て、

「数学ができていない」

とは判断していません。

むしろ、この24点という数字から考えたいのは別のことです。

学校の定期テストに合わせるべきなのか

もし定期テストで80点を取ることを最優先するなら、試験前には学校の範囲を徹底的に勉強する必要があります。

しかし、その時間を大学受験のための先取りや復習に使う方法もあります。

どちらが正しいかは、生徒によって違います。

推薦を狙うなら評定は重要です。

学校の成績を落とせない生徒もいます。

一方、一般選抜を中心に考えるなら、全国模試や大学入試で必要になる力を優先する考え方もあります。

Bの場合は後者です。

だから、

定期テスト24点

と、

全国偏差値62.4・校内50位

が同時に存在します。

「先取り」より重要だったこと

Bの学習を振り返ると、高校英語を早く進めたことが目立ちます。

しかし、私がそれ以上に重要だと思っているのは、

高校生になってから中1数学へ戻ったこと

です。

分からないのに先へ進む。

学校が進んでいるから、自分も進む。

それをしませんでした。

一度止めました。

そして3学年分を戻りました。

高校生にとって、これはかなり大きな決断です。

しかし、その後は高校数学へ戻ることができました。

だからBの、

15位 → 95位 → 150位 → 50位

という順位だけを見ても、本当の学習の中身は分かりません。

150位だった時期も、失敗していたとは限らない。

別の科目を作り直していた途中だった可能性があります。

そして、第二高校そのものにも変化がある

Bたち現在の高校2年生について、もう一つ気になることがあります。

第二高校では、この学年あたりから、

学校から出される課題が以前より少なくなった。

課外も、

自由参加になった。

という話を聞いています。

もし学校から与えられる勉強が減れば、生徒自身が使える時間は増えます。

Bのように、

中学数学へ戻る。

自分の弱点をやる。

学校とは別の順番で大学受験勉強を進める。

ということもしやすくなります。

そして現在の第二高校高2は、全国模試でかなり強い。

これは偶然なのでしょうか。

それとも、

学校が生徒を管理しすぎなくなったことが、現在の高2の強さと関係しているのでしょうか。

まだ結論は出せません。

なぜなら、現在の高2がもともと強い学年だった可能性もあるからです。

次回は、ここを考えます。

次回

【第8話】第二高校は「管理しない学校」になったのか

――課題を減らし、課外を自由にした学年が強い

学校が勉強させるほど、生徒は伸びる。

本当にそうなのでしょうか。

そして高校3年になると、第二高校にはまた別の姿が見えてきます。

私立文系を志望する生徒にも、共通テスト2日目の理数科目まで受験するよう求める進路指導。

「自由になった第二高校」という仮説は、高3まで見ると、それほど単純ではなさそうです。

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