「高校の実力」はどこで決まるのか――第一・第二・マリストを追う【第5話】数学平均12点

マリストは、なぜ定期テストを難しくしたのか

前回、第二高校2年生の数学の定期テストについて書きました。

100点満点で、

平均24点。

かなり難しいテストです。

しかし第二高校の場合、不思議なことがあります。

定期テストでは平均24点なのに、全国模試では強いのです。

2026年7月進研模試の国数英3科目では、

全国平均 98.0点
第二高校平均 117.0点

全国平均を19点上回っています。

だから、

「定期テストが難しいから、第二高校の教育はおかしい」

とは言えません。

少なくとも現在の高校2年生は、全国模試でも実際に結果を出しています。

ところが、熊本市内でもう一つ、非常に難しい定期テストを行っている学校があります。

熊本マリスト学園です。

そして、こちらを調べていくと、第二高校とは少し違う姿が見えてきました。


高1数学、平均12点

現在のマリスト高校1年生。

数学の定期テストの平均点は、

12点。

100点満点です。

実際、この学年で追っている生徒は9点でした。

9点だけを見れば、

「数学がほとんどできない生徒」

と思うかもしれません。

ところが、この生徒は7月進研模試の数学で、

全国偏差値60.0
校内24位

でした。

全国偏差値60の生徒が9点。

しかも学校平均が12点。

これは、生徒の数学力が極端に低いから9点になったとは考えにくい。

テストそのものが非常に難しい。

そう考える方が自然です。


高2でも平均20点

これは高1だけではありません。

現在の高校2年生でも、数学の平均は、

20点。

実際に追っている生徒を見ると、

15点の生徒もいれば、40点の生徒もいます。

つまりマリストでは現在、

高1 平均12点
高2 平均20点

という数学の定期テストが行われています。

第二高校高2の24点より、さらに低い。

ここで一つの疑問が生まれます。

なぜ、これほど難しくする必要があるのでしょうか。


以前のマリストは違った

実は、以前からこうだったわけではありません。

現在の高校3年生が高校1年生だったころ、定期テストの性格は今とはかなり違っていました。

当時、私が見ていた生徒の中には、最初20点程度だった生徒がいました。

しかし試験範囲を確認し、教科書や学校教材を使って2週間ほど定期テスト対策をすると、

80点程度まで上げることができました。

つまり、

授業で習ったことを理解する
↓
学校教材を繰り返す
↓
定期テストで確認する

という構造が比較的成立していました。

ところが、約1年前から様子が変わりました。

生徒たちから聞く限り、数学の定期テストに大学入試に近い問題が増え、平均点が大きく下がるようになりました。

現在の高3は、高2からこのタイプの定期テストを受けています。

高1、高2はさらにその環境の中で高校生活を送っています。


黄チャートだけではない

さらに興味深いことがあります。

現在のマリスト高1には、

黄チャートと青チャート

の両方が渡されています。

青チャートといえば、大学受験数学ではかなり有名な問題集です。

難関大学まで見据えるなら、使い方次第では非常に強力な教材になります。

学校公式資料でも、特進クラスは難関大学を目指すクラスとして位置づけられています。

したがって、難しい教材を生徒に与えること自体は、学校の方針として理解できます。

ところが、生徒によると、

黄チャートも青チャートも、授業では使っていません。

ここが気になります。

教材を持っていることと、

教材を解けることは、

同じではありません。


難しい教材を「渡す」こと

例えば青チャートを高校1年生に渡したとします。

それだけなら簡単です。

しかし本当に重要なのは、

例題を理解できるのか。
解説を読めるのか。
類題を自力で解けるのか。
数か月後にも再現できるのか。

ということです。

難しい教材を配る。

難しい問題を定期テストに出す。

この二つだけなら、学校の数学教育は一見高度に見えます。

しかし、

「難しいものを与える」ことと
「難しいものを解ける生徒を育てる」こと

の間には、大きな距離があります。


第二高校との決定的な違い

ここで前回の第二高校に戻ります。

第二高2の数学定期テストは平均24点でした。

非常に難しい。

しかし全国模試を見ると、

校内50位で全国偏差値62.4。

108位で58.5。

245位でも51.7。

そして学校平均そのものが全国平均を約19点上回っています。

だから第二については、

「定期テストは難しい。しかし全国学力も高い」

という事実があります。

では、マリストはどうでしょうか。

ここからが重要です。


全国偏差値49.4で、理系21位

現在のマリスト高校3年生の7月進研記述模試を見てみます。

ある理系生徒は、

5教科7科目理系 全国偏差値49.4。

ほぼ全国平均です。

ところが校内では、

21位/91人。

上位約23%です。

さらに数学を見ると、

全国偏差値46.8
校内21位/96人。

全国平均を下回る数学力でも、マリスト理系では上位4分の1程度に入っています。

物理は本人が強く、

全国偏差値56.4
校内6位/69人

でした。

しかし学校平均を見ると、

全国平均39.0点
マリスト平均26.4点。

化学でも、

全国平均34.9点
マリスト平均25.4点。

少なくともこの模試、この受験集団では、理科の学校平均は全国平均を下回っています。


テストを難しくした結果、生徒は強くなったのか

ここで、かなり重要な問いが生まれます。

マリストでは定期テストが難しくなった。

高1平均12点。

高2平均20点。

黄チャートだけでなく青チャートまで配られている。

では、その結果、

全国模試で生徒たちは強くなったのでしょうか。

現時点で集まっているデータだけを見ると、

少なくとも「明らかに強くなった」と言える証拠はありません。

むしろ高3理系では、全国平均程度の生徒が校内上位に入るケースが確認されています。

ただし、ここで結論を急いではいけません。


学校だけの責任にはできない

生徒の成績は、学校の授業だけで決まりません。

本人が勉強したか。

部活動はどうだったか。

高校受験後に意欲が落ちたか。

家庭学習を続けたか。

塾を利用したか。

様々な要因があります。

実際、現在追っているマリスト高2の生徒にも、高校入学後に大きく学習意欲を失った生徒がいます。

だから、

「マリストの定期テストを難しくしたから学力が下がった」

と結論づけることはできません。

これは今の段階では、あくまで検証すべき仮説です。


ただ、一つだけ確かなことがある

定期テストを難しくするだけでは、

教育が高度になった証明にはならない。

これは言えると思います。

平均12点のテストを作ること自体はできます。

青チャートを配ることもできます。

しかし本当に見るべき数字は、その後です。

全国模試でどうなったのか。

大学入試でどうなったのか。

入学時より生徒がどれだけ伸びたのか。

学校教育を評価するなら、こちらを見る必要があります。

そして、ここから調べていくと、マリストには定期テストとは別に、もう一つ非常に特徴的な仕組みがあることが分かってきました。

特進クラスです。

次回は、3人の第二高校生に戻ります。

高校入試で、

194点、174点、170点。

最も高かった生徒が、高校でもずっと一番だったわけではありません。

むしろ高校に入った後、順位は大きく入れ替わりました。

次回

【第6話】194点、174点、170点

――高校入試の順位は、1年後も続くのか

高校入試の20点差は、高校に入ってからも本当に20点差なのでしょうか。

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