【熊本からの大学受験】私立実力校の「駆動エンジン」と適合性【いろはにほへと:第8回】

​同じ学校で、なぜ「力を発揮する子」と「力を発揮しにくい子」に分かれるのか

​「真和、マリスト、学付。どこが良い学校ですか?」

​塾長として進路相談を受ける際、最も多く投げかけられる質問です。

しかし、この問い自体が実は本質からズレています。

なぜなら、同じ学校に進学し、全く同じ合格点数を持ってスタートしたはずなのに、3年後に「覚醒して劇的に力を発揮する子」と「本来の力を発揮しきれずに失速してしまう子」へ分かれる傾向があるのが、高校受験のリアルだからです。

​重要なのは、学校のブランド(偏差値)ではありません。

その学校が持つ「子どもを動かす環境」に対して、「わが子の気質が噛み合うかどうか」——。

主語を「学校」から「生徒」へとひっくり返し、熊本の私立3校をモデルに、その環境について考察します。

​1. 高い基準と競争心が原動力になる環境(真和高校)

​〜周囲のレベルの高さに火がつく子、比較されて自信を失う子〜

​この環境が持つ実績は、学校の指導力だけで生まれているわけではありません。

「合格してきた優秀な生徒たち」「教育熱心な家庭」「医学部・難関大を目指すのが当たり前という空気」の3つが揃うことで、あの高い進学実績が形作られている側面があります。

  • この環境で「力を発揮しやすい」生徒の気質 「周りのレベルが高ければ高いほど、燃えるタイプ」です。中学時代は周囲に物足りなさを感じていたような、プライドと自立心のある子がこの環境に入ると、良い刺激を受けるケースが目立ちます。「上がいる、面白い!」と周囲の「高い基準」に引っ張られるようにして、自分の限界を広げていくことができるタイプです。
  • この環境で「力を発揮しにくい」生徒の気質「人と自分を比べて、過度に落ち込んでしまうタイプ」です。まだ将来の目標がはっきりせず、受動的に入ってしまった場合、周囲の圧倒的にデキる子たちを前にして気後れし、「自分はダメだ」と自信をなくしてしまうことがあります。周囲のプレッシャーと自分の現在地との間にミスマッチが起きたとき、本来のポテンシャルを発揮しづらくなる傾向が見られます。

​2. 濃厚な伴走と安心感が軸になる環境(熊本マリスト学園)

​〜見守られて伸びていく子、手厚さに甘えて止まってしまう子〜

​この環境の本質は、激しい順位競争で生徒を煽るシステムではありません。

夜間自習室の開放や先生方が遅くまで残る体制など、「学校が最後の最後まで面倒を見る」という、手厚い学習環境が特徴です。

  • この環境で「力を発揮しやすい」生徒の気質 「先生から声をかけられ、見守られている」と実感して頑張れるタイプです。集団の中で揉まれると萎縮してしまうような内向的な子が、この安心感の中に置かれると、心が安定してコツコツと努力を積み重ね始める傾向があります。学校の指定校推薦枠などを賢く活用し、進路を切り拓いていくのもこのタイプに多く見られます。
  • この環境で「力を発揮しにくい」生徒の気質 「誰かがお尻を叩いてくれるまで、自分から動きにくい」というタイプです。学校がこれだけ手厚く環境を用意してくれるからこそ、その居心地の良さに甘えきってしまい、自分で考えて動く力(自走力)が育ちにくくなる面もあります。気がつけば、3年間あまり主体的に動けないまま卒業を迎えてしまうリスクを孕んでいます。

​3. 多様な価値観と選択肢が混在する環境(熊本学園大付属高校)

​〜混沌を刺激に変えて自走する子、ラクな選択肢に流されて迷子になる子〜

​この環境は、熊本で最も生徒数が多く、進路の選択肢が多岐にわたるダイナミックな学校です。

済々黌などの公立トップ校と競り合う「特進クラス」の学力層から、部活で全国を目指す層、内部推薦で大学へ進む層まで、全く違う価値観を持つ生徒たちが同じ校舎に同居しています。

  • この環境で「力を発揮しやすい」生徒の気質 賑やかな学校生活を楽しみつつ、「やる時はやる」と自分をコントロールできるタフな生徒です。部活も、行事も、勉強も、高校生活のすべてを欲張りたいという馬力のある子。学校の課題に縛られすぎない自由さを味方につけて、自分のペースで必要な学びを選択し、一般受験で難関大へ突っ込んでいく強さを持っています。
  • この環境で「力を発揮しにくい」生徒の気質 周囲の環境に流されやすい気質の子です。周りの楽しそうなイベントの熱量や、充実した「内部進学・推薦」という選択肢に早くから安心しきってしまうと、一般受験に必要な「泥臭く机に向かう体力」を身につける機会を逃してしまうことがあります。楽しい3年間と引き換えに、気がついた時には進路選びで迷子になってしまうケースも見受けられます。

​結び:学校選びの視線を「我が子」へ

​これまで、6校の高校受験マップをシステム論で解剖してきました。

​これを通じて私が一貫して伝えたかったこと。

それは、学校選びの基準を、偏差値という「静的な数字」から、相性という「動的な力学」へと切り替えてほしい、ということです。

​学校を見ることは大切です。

環境を見ることも大切です。

しかし最後に見るべきなのは、その環境の中で3年間を過ごす「我が子」です。

​高校選びとは、学校の優劣を決める作業ではありません。

我が子がどの環境で最も自分らしく成長できるのかを考える作業なのだと思います。

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