【熊本からの大学受験】夏休みという実戦①​〜夏休みは逆転の期間なのか〜【いろはにほへと:第49回】

​前シリーズで、リビングの机の上にすべてのデータを広げ、不器用に揺れながらも「我が家のルート」を見つめ始めたあなたと子どもたちの前に、いよいよあの季節がやってくる。

​受験生にとって最大の天王山とも言われる、「夏休み」である。

​学校の授業が止まる約40日間。

塾のチラシやメディアには、「夏は逆転のチャンス!」「この夏で人生が変わる!」といった刺激的な言葉が躍り、受験生を持つ家庭の焦燥感を激しく煽り立てる。

​ここで、現場のリアルな「事実」をベースにして、私たちは最初のブレーキをかけなければならない。

夏休みそのものは、誰もが一発逆転できるような魔法の期間ではない。

教育の現場において、「夏休みだけで人生が変わる」などという甘い神話は、存在しない。

​インターネットにあふれる「夏から死ぬ気で勉強して大逆転した」というエピソードをそのまま信じ、7月21日の終業式から突然猛勉強を始めようと目論むのは、極めて危険なギャンブルである。

​■ 逆転の裏にある、冷徹な「事実」

​勘違いしないでほしい。

夏休みを境に、模試の成績を急激に伸ばし、志望校を引き上げて逆転合格していく子は、確かに現場に存在する。

​しかし、そこに魔法はない。

彼らが夏に伸びたのは、「夏休みという期間」が特別だったからではない。

春からの数ヶ月間、地道に机に向かう習慣を積み上げ、前シリーズで提示した「自分のデータ」を診る目を持ち、すでに自分のルートを決めていた子が、夏休みという「まとまった時間」を手に入れた瞬間に、その一気に投下した資源(リソース)の成果が表面化しただけだ。

​基礎の土台(学習基盤)も崩壊したまま、自分の武器も致命傷も分析せず、ただ「夏休みだから」と塾の夏期講習に朝から晩まで座らされているだけの子が、秋に大逆転を起こすことなどあり得ない。

​夏休みは、ゼロから奇跡を起こすリセットボタンではない。

これまでリビングで積み上げてきた「ハンドル・データ・意思決定」という武器を、実際に過酷な戦場で使いこなすための、最初の「実戦訓練」の場なのだ。

​■ 魔法を探すな、実戦を始めよ

​多くの親子が、夏休みを前にして「どの参考書をやればいいか」「1日何時間勉強すれば逆転できるか」という、便利な正解(魔法)を探し回ろうとする。

​しかし、その視点に立っている限り、夏の魔物に足元をすくわれることになる。

夏休みに必要なのは、華々しい思想や新しい勉強法ではない。

ただ淡々と、「我が家の戦略」を、リビングの日常の中で実行に移すことだ。

​40日間という限られた資源を、私たちは一体どこに、どのように配分していくのか。

次回から、私たちは「計画が崩れる本当の理由」という、夏の最初の壁へと向き合うことにしよう。

​他人の作った神話で踊る夏は、もう終わりだ。

自ら決めたルートを泥臭く歩む、私たちの本当の夏が、ここから始まる。

​次回、

【夏休みという実戦②】 〜計画はなぜ崩れるのか〜

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