「先生、あと何点取れば、熊高に行けますか?」
熊本で高校受験の相談を受けていると、親御さんから最も多く投げかけられるのが、この「点数」と「偏差値」を巡る問いだ。
我が子の現在地を数字で測り、安心したいという気持ちは痛いほどよく分かる。
しかし、17年の現場の結論として、私は最初に非常に重要な、そして少し耳の痛い現実を告げなければならない。
実は、その質問の立て方そのものに、熊本の高校受験最大の落とし穴が隠れている。
多くの親子は、高校受験を「入試当日に何点取れるか」のゲームだと思っている。
「内申なんて関係ない、本番で一発逆転すればいい」と楽観視する声もあれば、逆に「中1、中2の内申がボロボロだから、もううちの子の受験は終わった」と絶望する声もある。
断言しよう。そのどちらも、致命的な勘違いだ。
熊本の高校受験は、点数だけで決まるほど単純ではないし、内申点だけで人生が決まるほど底浅くもない。
私たちが最初に解体しなければならない最後の幻想。
それは、「受験は入試当日の点数だけで決まる」という思い込みだ。
■ 熊本受験は「総合格闘技」である
熊本の高校受験の本当の姿を、分かりやすく一言で表現するなら、それは野球やサッカーのような単一の球技ではない。あらゆる局面の技術が求められる「総合格闘技」だ。
パンチ(本番の点数)だけがどれだけ強くても、タックル(内申点)で倒されてしまえば負ける。
寝技(定期テスト)が完璧でも、立ち技(模試)で全く歯が立たなければリングには残れない。
多くの親子が受験という戦場で迷子になるのは、ルールの解説書を読んでいないからではない。
自分が今、どの競技のリングで戦っているのかという「戦場地図」を持っていないからだ。
熊本の受験という総合格闘技は、主に以下の5つの競技が、網の目のように複雑に連動して成り立っている。
- 内申点(評定):中1から積み重なる、学校の「生活態度と成果」の記録。
- 定期テスト:教科書の内容をどれだけ忠実に「暗記・理解」できているかの勝負。
- 実力テスト(共通テスト含む):中学校の範囲が「どれだけ定着しているか」の国境線。
- 模試:熊本県内の全受験生の中で、自分の「立ち位置」を知るための羅針盤。
- 入試本番:これらすべての土台の上に立つ、最終決戦の1日。
これらは決してバラバラに存在しているわけではない。
すべてが一つの巨大なシステムとして、あなたの合否を静かに、冷徹に決定していく。
■ 「何点必要か」ではなく「どこで戦っているか」
「あと何点ですか?」と問い続ける限り、あなたは終わりのない数字の不安に振り回され続けることになる。
今日、この瞬間から、受験を見る目を「不安」から「戦略」へと切り替えよう。
あなたが今、我が子のために、あるいは受験生であるあなた自身がやるべきことは、合格ラインの数字を調べることではない。
「今の自分は、この総合格闘技のどの競技で勝ち、どの競技で負けているのか」
その現在地を、冷徹に、客観的に見極めることだ。
本番のパンチ力はあるのに、内申というタックルで足をすくわれそうになっていないか。
定期テストの寝技は強いのに、模試の立ち技でパニックになっていないか。
それが見えて初めて、初めて私たちは「勝つための具体的な戦略」を練ることができる。
安心のための神話は、もうここにはない。
あるのは、冷徹なルールと、それを使って我が子をどう勝ち上がらせるかという、知略の戦場だ。
では、この総合格闘技の最初の関門であり、多くの親子を恐怖させる「内申点」という魔物の具体的な正体と、その攻略法について、いよいよ解剖を始めよう。
次回、
【内申点という魔物②】〜なぜ、あの大人しい子が落ちるのか〜

コメント